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極東ロシアのサマルガ・エコツアー遂に本年開始へ動く

− 2000年2月のウラジオ会議の第一レポート −


今年2月のウラジオ会議の夕食会でロシア側参加者にエコツーリズムの意義を説明する大地グループの総帥藤田和芳氏
(1)極東ロシアの沿海州日本からのエコツーリストを歓迎

2月28、29日および3月1日の3日間にわたって開かれた会議で、生産者と消費者を結び付ける新しい型の団体『大地』グループは、ウラジオで沿海州北端のサマルガ渓谷の中流に位置するウデゲ族中心のアグズ村の『ウデゲ先住民協会』と、エコツアーの実現可能性について討議しました。

今回の会議では、日露双方の熱心な努力によって大きな成果が生み出されたことは特筆すべき快挙としてご報告できるのをうれしく思います。バーチュアルファウンデーションジャパンの立場からしても、今回、『大地』側が先ずは今夏エコツーリズムから始めて、中長期の計画を進めようという決定は、慎重であり且つ賢明な行動であったと信じます。


バーチュアルファウンデーションジャパンの専務理事岡本豊は、議長として基本戦略とサマルガ河渓谷のエコツアーの意義についての討議を進めた

この種の仕事を正しく進める方法としては、このやり方が適していると私は信じています。これは、最初に先ず人と人との間の直接交流の機会をロシアと日本が協力して作る、より具体的には、東京地域の消費者とサマルガ河渓谷のアグズ村の住民との間に作り出すという進め方だからです。

このような方法で始めれば、その後双方の協力でエコツアーの仕事が成功を収めれば、それに付随して出来る他の仕事、すなわち、小規模な燻製と缶詰の工場をアグズ村に設けて来訪するエコツアリスト達が釣った魚をお土産に加工し、その経験を踏まえ、設備を使って自分たちの小規模な食品加工と製品販売に進むことが可能となるからです。そして、ウデゲ族協会がエコツアリスト達のための食品加工の仕事を立派にこなすようになれば、シベリアの森林の豊かな自然が育む山菜、果実、薬草といった多様な自然食品の加工に踏み込むことが可能となるのです。


このような情報通信システムは、日本語、英語およびロシア語の3ヶ国語翻訳サービスを使用し、情報を発信あるいは受信する側は自国語だけで相互に自由に交信できます
上記の諸目的を実現するためには、先ず第一にバーチュアルファウンデーションジャパンは東京とサマルガのウデゲ先住民協会との間に、協会のウラジオ連絡事務所経由のインターネット/PC通信システムの構築と取組みます。この通信システムを利用して行う最も緊急性の高い仕事には、(1)ウデゲ先住民協会と大地グループの間のエコツーリズム実施に関する契約書の内容を詰め署名し、実行段階にまで進める、(2)本年度6月に20名前後のグループが予定されている第一回のエコツアーの具体的内容を詰める、(3)日本からのエコツアリストをガイドする場合の心得や、ツアー参加者のための釣果の燻製加工のテクノロジーに関して、質疑応答の可能な特別技能研修・訓練コースを急遽制作しインターネット上とCD・Romとの双方でアグズ村の関係者が学習できるように提供する。このような方法で日本に持ち帰られたサマルガ渓谷からのエコ食品は、ツアー参加者から口コミで多くの人達に語り伝えられる可能性が期待できます。

私は、地球の友さんにお話しして、この通信システムのハードウエア調達資金の提供をお願したいと考えており、これにバーチュアルファウンデーションジャパンが、通信と情報提供、小規模ビジネス管理と加工テクノロジーの研修プログラムを制作、実施し、言語障壁の除去のための翻訳サービスを提供することで協力したいと考えています。研修と訓練の対象はサマルガ河渓谷に住む青年達を中心としますが、日本の青年ボランティアの方々にも国際エコツアーのガイドのノーハウの習得に利用して頂く心算です。

(2)日本海を船で横断して目的地に向かうエコツアーも将来は可能か?


ウラジオは不凍港であり、1月から2月という最も寒い冬の季節にも航行に必要な水路は開いています
沿海州沿岸の海上交通の中心はやはりウラジオですが、将来は、北日本と沿海州の北部をつなぐチャーター船の運行が可能でないか、これが出来れば、サマルガ渓谷へのエコツアーはもっと冒険のスリルに満ちたものとなる可能性があります。
このような考えを持って、私達はウラジオにある極東ロシア最大の海運代理店『トランスフェス』社を訪ねました。討論の結果、これの実現には数多くの問題を解決する必要があるが、決して将来にわたって不可能であるわけではなく、相互に前向きの成果が期待できる仕事となる可能性があれば、今後とも共同して検討を進めたいとの意向が聞かれました。
このような夢が実現するまでの過渡的な交通手段としては、ウラジオ経由で大きな時間のロスを被るのを避ける意味で、サマルガ河の北西のハバロフスク州の首都ハバロフスクを経由する近道の空路が有望な可能性として検討されています。

『トランスフェス』社の会議室で:向かって左から、クルダコフ、ウリスキン、スヴィストノフ、アルカディ、岡本、ノソフの諸氏

現在のウラジオ経由のルートの場合、空路新潟から到着してからサマルガ河中流のアグズ村に至る最短空路は、ウラジオ一泊の後先ず小型双発ジェット機で半道を飛びプレスティンに至り更に一泊の後、バスでテルネイ市に行き大型ヘリでアグズ村に飛ぶというもので、全飛行時間は3時間強ですが、宿泊時間を入れると4日から5日は移動に取られるわけですが、ハバロフスク経由ならば時間が劇的に短縮され得ます。
その上、ハバロフスク経由の場合には、アグズ村との間に緊急救難ヘリコプターのサービスも期待できますので、このルートが可能となれば、サマルガ河渓谷のエコツアーはほぼ難なく実施が可能な条件が揃います。アグズ先住民協会では、鋭意このルートの開発に努力をしていますので、今夏までにその実現が十分に期待されます。

(3)沿海州やハバロフスク州の遠隔地の地域社会は、各地ともほぼ同様なニーズを抱えている


去る2月の現地会合でナナイ族とウデゲ族の婦人代表にエコツーリズムのコンセプトを説明する藤田氏
今回の旅行中に我々は複数の先住民族組織の代表達と話し合う機会を持ちました。どの地域の場合も、仕事が無く潜在失業者の数が増加しているという意味では各地とも同じ状況である事実は承知していたものの、聞く者の心を暗くする点は、住民達にとって、将来に向けて維持可能な、地域に根差した基盤産業を育成する見通しが全くと言ってよいほど欠けているという事実でした。
かのペレストロイカ改革以来、なし崩し的に進んできた中央集権制度の崩壊と企業民有化と経済活動の自由化の波は、過去にソ連政府が行い、極東ロシアの先住民族社会が依存してきた各種の補助金制度を、1990年代には急激な廃絶に追い込みました。例えば、アグズ村の場合には、黒テンの毛皮といった輸出用高級毛皮の実需の減少の結果もあり政府の買い付けは激減し、それ以外の各種の野生有用植物の市場も途絶えるに至った結果、集団化(=西洋近代化)した生活の維持は極度に困難となっていますが、さりとて、社会主義以前の狩猟採取生活に戻ることもできない、という新旧二つの世界のいずれにも依存できないという実状があるのです。


TINRO(連邦政府水産資源研究センター)の専門家達との会合では、彼らの側のさけます資源や孵化放流事業に関する専門的意見が聞かれた
サマルガ河は今日でも豊かなさけます資源を持っているのは事実ですが、日露両国によって長期間続けられてきた海上での流し刺し網漁は、日本だけではなく、沿海州各地の河川に遡上産卵するさけますの資源にも重大な損害を与えてきています。
このような状況に対応する必要もあってか、私達は先住民連合や、その依頼を受けたTINROから、日本の孵化場の実績や運営経費に関する参考資料の提供を要請されていますが、これは、現地の河川へのさけますの来遊量が低すぎると判断される年度の資源の回復を目的とする対策の検討のためだとのことです。孵化放流事業の可否、特にさくらますに関する問題点が、さくらます資源の専門研究者であるセマンチェンコ博士や、博士門下の学者の間で討議されましたが、彼らの結論は、生物多様性維持の観点からする遺伝学的な問題が云々されている事実はあるが、さくらますの孵化放流事業の技術的可能性と採算性についての研究は続けるべきたというものでした。


ウデゲ、ナナイの婦人団体リーダー達との会合を終えた日本側代表:左から、吉田、スヴィストノフ、藤田、アルカディ、岡本、カンチュガ、セリューク、ノソフ、豊島の諸氏
先住民の連合やボランティアグループの代表の皆さんとは、今後も協力関係の構築を継続することに同意し、同時に、かれらが自らの地域社会の活性化や地域を支える小規模企業の育成に役立つ情報については、日本の我々も今後出来るだけ情報提供に尽力することを約束しました。
バーチュアルファウンデーションジャパンは、インターネットとPCを駆使した両方向の情報交換と通信システムを利用して、今後はこのような情報提供活動を通じて、現地での維持可能で環境にやさしい小規模地場産業の育成に必要な支援を行ってゆく用意がある旨を伝えたのでした。
このような協力関係が今回のエコツーリズム事業でその有効性を確認されれば、このようなサービスは単に沿海州全域にとって有用であるだけではなく、ハバロフスク州、いや、その北や西に広がる広大なシベリア各地でも効果的に活用が可能となります。この意味でも、今回のサマルガでのエコツーリズム事業は秘められた重要な意義を持っていると言えます。

(4)市場経済と自由競争の原理がもたらすチャレンジ


魚はしばしば海外市場の基準からすれば不適当な方法で処理され、箱詰めしないままでの緩慢バラ凍結なので、商品の市場価値は極端に低い
小規模な地元水産加工と有用野生植物加工の地元事業化の可能性と、それを支える海外市場の有無の検討が、今回のウラジオ会議に出席した地域代表の主要な関心事でした。
1999年の9月に私達が現地に2週間にわたって滞在して行ったFS研究の結果すでに明らかとなっていたことの一つは、製品の品質に関する現地側の常識的理解と日本市場が要求するそれとの間には、重大なギャップが存在するという事実でした。それは、単に僻地のアグズ村の住民の常識に止まらず、極東ロシアの最大都市ウラジオの魚市場にも歴然と見られる事実なのです。このようなギャップを最も劇的な形で示す視覚データを収集する目的で私達はある日の午後ウラジオの青空魚市場を訪問した時の写真がこれです。この市場で小売されている魚は、どれ一つを取っても、外部競争市場、特に日本の水産市場での競争には全く耐えることは不可能なものでした。

燻製製品に関しては、味は決して捨てたものではありません。但し、鰊は丸の燻製で山積みで販売され、さけも、写真のとおり三枚おろしにした巨大な半身で売ります


これら全ての欠点は、もし漁労段階から、加工、流通、貯蔵を経由して小売店の店頭に至るまでのきめ細かい改善が行われれば勿論改善が可能です。この市場訪問の結果、沿海州の各地で将来生産拠点となる地域にとっては、上に述べてきた漁労段階から加工の全工程にわたる我が国が持つ生産と加工テクノロジーの効果的提供と現地関係者による真剣な摂取への取組みが成功への必須の条件となります。

従って、今後の日本側の作業日程の中で極めて重要となるのは、インターネットとPCによる通信システムを日本と現地との間に早急に設置し、アグズ村の先住民協会に対して必要にして適切な小規模水産加工テクノロジーと管理ノーハウを提供し、エコツーリズムの展開と同時に、地域資源の維持可能で高度な利用方法を具体的に実現するための協力でありましょう。バーチュアルファウンデーションジャパンは、大地グループと地球の友との緊密な協力組織を構築し、アグズ村に明るい未来への希望の種子をしっかりと大地に埋め込むことに全力を尽くす所存です。

本プロジェクトの御関心のおありの方は、バーチュアルファウンデーションジャパン事務局まで電子メールを頂ければ追加情報をご提供します


2000年3月6日付けレポート −− 文責と内容に関する責任はVFJにあります
本ページに使われている写真はすべて今回のウラジオ会議期間中に岡本が撮影したものです

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