(1)問題の所在と分析の手段について
地域社会の発展とそれが置かれたエコシステムとの間には多岐にわたる、複雑な相関関係があります。本プロジェクトは、人間の社会生活の経済的な側面の中で、人口と資源と市場との間の綱引きの問題と、その帰結の分析を、特に農林水産資源のエコシステムに焦点を当てて行います。
調査の対象となる地域は、北西太平洋沿岸、すなわち日本では関東以北から東北地方および北海道を、ロシア側では、韓半島の北に広がる中国北東部から沿海州を経て極東シベリアのカムチャッカ半島に至るまでの地域を含みます。そして、本プロジェクトでは、沿岸部のエコシステムと人口の変化との間の関係を探る主要な指標としては、そのライフサイクルの大部分を外洋で過ごし、故郷の河川に帰って産卵するサケマス科の魚類を選びました。
これは、臨海地域社会での人間の生活との関わりというコンテクストの中で重要な変化を見ようという観点からの選択であり、自然のエコシステムそのものを観察する場合には、必ずしも網羅的とは言えない嫌いがありますが、我々の関心はあくまで自然と人間との関わりというテーマであり、今回のプロジェクトの規模からして止むを得ぬ選択でした。南西太平洋沿岸の地域社会の問題をテーマとする場合に我々の選んだ指標生物が近海物のエビ類であることについても同じことが言えます。
(2)社会と環境のインタラクション
本研究でアジア太平洋地域の『地域社会』という場合、それは理念的にはアジア太平洋地域の各地で自然発生的に生まれ育ってきた広義の伝統的社会を指し、工業化・近代化の過程で発生する人為的な社会を意味しません。しかし、現実に世界では、殆どの地域社会はこの二つの対照的な理念形の折衷型であり、本研究では、前者の自律的発展の過程にインパクトを与える外部要として後者を扱うという問題の立て方をとります。従って、インパクトの大きさと深刻さによって次のような分類を暫定的に仮定しています。
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インパクトが僅少に止まり、伝統的地域社会が基本的には自律的な発展過程をたとる場合
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インパクトが相当強く、発展の過程で伝統的地域社会のあり方に相当な変化が生じる場合
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インパクトが深刻な影響を与え、発展の過程で伝統的地域社会のあり方に決定的な変化を生む場合